令和7年度第3学期始業式・校長講話
皆さん、おはようございます。そして、新年おめでとうございます。冬休み中、事故の連絡もなく、皆そろって3学期の始業式を迎えられたことを、うれしく思います。新年早々雪も降り、冷え込む日も多くなりましたが、2週間前に話をしましたが、思いやりと感謝の心、温かい気持ちで新年を迎えたでしょうか。本校のシンボル「鷹の如く」視野を広く羽ばたくように、コシニー皆にとって良い年となりますよう、心から願っています。
世界に目を向けると、まさかと思う事態があちらこちらで起こり、益々先を見通すことが困難との感 が大きくなる中、今日は「マニュアル」について話します。マニュアルはとても大切で、社会にとってなくてはならないものです。例えば、安全確保のため、伝統や仕事のノウハウ、気持ち良い接客業までも、どの分野でも拠り所としている存在です。学習や部活動でいうところの基礎基本ですね。でも、マニュアルにとらわれすぎるあまり、時におかしなことも起こります。
<あるハンバーガーショップでの話です>
孫のサッカーの試合を見に行ったお爺さんは、孫から「試合が終わったら、ハンバーガーを食べたい!」とせがまれたので、チームの皆に差し入れようと、試合途中一人で近くのハンバーガーショップに行っての、店員との会話です。
「ご注文はお決まりでしょうか?」/「ハンバーガー30個ください。」
「店内でお召し上がりですか?」 /「え~……?」とお爺さん、絶句。
一人で来店した年寄りが、30個のハンバーガーを一人で平らげる姿を想像でもしたのでしょうか。呆れるとともにイラっとしたそうです。おそらく何も考えず、マニュアル通りの対応をしたのでしょう。気持ちよい接客マニュアルが、客を戸惑わせたり、気持ちを逆なでしてしまう。マニュアルの持つ落とし穴の一例です。一方で、こんな話があります。
<東京ディズニーランド内の、とあるレストランでのお話です>
ある若いご夫婦が、二人がけのテーブルに座り、食事のオーダーをしました。
「Aセット一つと、Bセット一つ、お願いします。」一呼吸置いて
「それと、お子様ランチを一つ頂けますか?」
ウェイトレスはテーブルを見渡し、
「お客様、誠に申し訳ございません。お子様ランチは小学生のお子様までとなりますので、ご注文は頂けないのですが…。」
すると、そのご夫婦はにっこり微笑んで、
「すいません、それならいいんです。」と応えました。
しかし、何だか気になったウェイトレスは、勇気を出してマニュアルから一歩踏み出して、尋ねました。
「失礼ですが、お子様ランチはどなたが食べられるのですか?」
ご夫婦はしばらく顔を見合わせた後、話し出しました。
「実は私たち、娘がおりましたが、幼くして亡くしてしまい、ディズニーランドに連れてくることも叶いませんでした。娘を亡くしてから、しばらく何をする気力も起きず、毎日を過ごしていたのですが、ようやく気持ちが落ちついてきたので…。今日は、亡くなった娘の誕生日、親子三人で一日楽しもうと、ディズニーランドを訪れ、思い出に三人で一緒に食事をしようと、お子様ランチを頼んでしまいました。あ、でも今日はもう十分楽しませて頂きましたので…。」
そう言いながら二人は再び、ウェイトレスに微笑みかけました。
ウェイトレスはその場でご夫婦に頭を下げ、「かしこまりました」と答えました。そして、そのご夫婦を二人掛けのテーブルから、四人掛けの広いテーブルに案内し、その数分後……。運ばれてきたのは、ご夫婦のオーダーした料理と、『お誕生日おめでとう』のプレートが立ったお子様ランチでした。子供用のイスを持ったウェイトレスもいました。
「お客様、大変お待たせいたしました。ご注文のお子様ランチをお持ちいたしました。お子様のイスは、お父さんとお母さんの間でよろしいですか? では、ゆっくりと食事をお楽しみください。」ウェイトレスはそう言って頭を下げ、その場を去りました。
後日、このご夫婦から手紙が届いたそうです。
「あの日、食事をいただきながら、涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているような、家族の団らんのひと時でした。あのような優しい思い出をいただけるとは、夢にも思いませんでした。今度はあの子の妹か弟を連れて、必ずまた遊びにきます。」
このウェイトレスの行動は、明らかにマニュアル違反です。でも、結果として、お客様にとってはこの上ない”おもてなし”となりました。
以上、3学期始業式にはふさわしい話でなかったかもしれません。でもこの話から、皆さんに感じてもらいたいと思い、話しました。繰り返しますが、マニュアルは大切なもの、必要不可決なもので、無くしては社会が成り立たないかも知れません。しかし、マニュアルでは対応しきれない事態は必ず起こるし、そのとき、どう行動がとれるかで、人の価値は決まると言っても過言ではありません。
2週間前、2学期終業式での話の続きです。適切な行動を取るカギは、「思いやる心」。思いやる心をもって考えを巡らすことに尽きるのではないでしょうか。マニュアルにしがみついて何も考えないのは論外。たとえ考えたとしても、自分の立場だけの考えでは、事を誤ります。目の前の人を思いやる、目の前にはいない人々にも思いを巡らせ、或るいは社会に対する影響まで思いやって、そして、発言・行動する。その自分の発言・行動ひとつで人の一生を最悪の方向へ導くこともあれば、逆に人に幸せをもたらすこともあります。
益々、先が見通せない時代だからこそ、「マニュアルを超えて」人をそしてその人の先まで思いやる心で、思いを巡らせ考える一歩を踏み出して行きましょう。さあ、第3学期は日数的には一番短い学期です。今年度の集大成の期間であり、第0学期とも言われる、来年度への準備の期間でもあります。「終わりよければ、すべてよし」。卒業する3年生、そしてコシニーの中心となっていく2年生1年生、マニュアルを超える、そんな素敵な先輩と呼ばれる自分へと磨きをかける2ヶ月半にして、1年を締めくくりましょう。